Adamovicのオイルフィニッシュのケアに関しまして
2017.02.16 Thursday
有り難い事にAdamovicのオーダー数が増えており、先日入荷致しましたSaturnの6弦で、
ちょうど80本目の国内入荷となりました。
ここまで広がっていったのは、販売頂いている楽器店様、購入して下さるお客様、
SNS等で話題にして下さる方のお陰だと感謝しています。本当にありがとうございます。
個人製作家なので年間の製作本数は多くはないのですが、現時点でも日本から数十本のバックオーダーを入れていますので、
なんとか年内には100本達成出来るかなと考えています。
ご購入頂いたお客様からAdamovicのオイルフィニッシュのケアに関してご質問を頂く事が多いので、
ブログに残したいと思います。
Adamovicの基本的な考えとしましては、お客様にオイルを塗って頂く必要はなく、
それよりは楽器の保管に気を遣って欲しいとの事です。
多湿も乾燥もよくありませんが、特に極端な乾燥は木材のひび割れにも繋がりますので長期間は避けて頂きたいです。
ですが、日本の冬はかなり乾燥し、暖房をつける事により更に乾燥が進みます。
なので、代理店としてはお客様にケアして頂きたいと考えていますが、
不適切な方法では逆に楽器の状態を悪化させてしまいます。
使用して頂くのはオイルではなくワックスで、特にオイルフィニッシュに使用されるオイルの使用は止めて下さい。
製作時にAdamovicの方でオイルフィニッシュ用オイルを使用していますが、
お客様にこれらのオイルを使用して頂く必要はありません。
代理店を始めた当初、5、6種類のオイルフィニッシュ用オイルの実験をしましたが、
これらは木材にかなり浸透します。しかも木材の内部で凝固し、完全に凝固するまでに時間がかかります。
浸透し過ぎるオイルは木材の膨張に繋がり、指板に塗ってしまいますとフレットを浮き上がらせる原因にもなりかねません。
これらのオイルは引火性があり、使用後の布等は水につけて廃棄する必要があり、万が一の事故の可能性もあります。
そこで私がお勧めするのは、ケンスミスのクラシカルワックスやオールドビレッジのビーズワックスの様な製品です。
製品によっては自然の物を使っていますと謳っていても、信じられないぐらいガソリン臭がする物もあり、
使用を躊躇う製品もありますので選んで頂いた方が良いです。
お問い合わせが多いレモンオイルやオレンジオイルは汚れ落としには良いですが揮発性がありますので、
保湿という意味ではあまり効果が期待出来ませんので、指板の掃除に使用した後は上記ワックスを塗って頂いた方が
良いと思います。
レモンオイルを塗らなくても上記ワックスだけである程度の汚れを落とす事が出来ますので、省いて頂いても構いません。
酷い汚れの際に使って頂ければ良いと思いますが、毎回使って頂いても問題はありません。
最近とある経緯でハワードのブッチャーブロックコンディショナーを入手したのでAdamovicに使用しましたところ、
べたつきがなく香料も入っていないので気に入りました。
香料入りのワックスは締め切った室内で作業していますと気分が悪くなる事もありますので。
ただ、このワックスは木製食器用で殺菌効果もあるらしくやや高価です。
楽器をかじるわけではないのでこの製品の優位性はありませんが、べたつきや香料が気になる方は試して頂くのも良いと思います。
塗って頂く際は、柔らかい布かティッシュで少量を伸ばし塗り込めて下さい。
過去にいくつかの製品で実験しましたが、塗り込めずに木材の上に軽く乗せただけでは
特に堅めの製品ではほとんど浸透せずに木材の上に残っていました。
どの製品もそうですが塗って頂いた後の処理が重要で、柔らかい布かテッシュでしっかり拭き取って下さい。
Adamovicが塗らなくても良いと考える一番の理由はこれで、しっかり拭き取らないとほこり等を楽器に付着させる事になり、
逆にトラブルの原因になってしまいます。
木材の部分によりワックスの染みこみ方も違いますので、拭き残しはシミになる可能性もあります。
ワックスの使用量が多すぎますと、拭いても後からしみ出してきますので、しみ出したワックスもしっかりと拭いて下さい。
楽器全体に一気に塗ってしまわず、部分部分に分けて塗って拭き取るを繰り返して頂いた方が良いです。
弦にワックスが付着しますと弦が劣化しやすくなりますので、弦を外してから塗って頂いた方が良いと思います。
ケアして頂く頻度は楽器の状態、保管場所の状況により違うのでなんとも言えませんが、
そんなに頻繁にケアして頂く必要はありません。
お使い頂くうちに感覚的に分かってくると思いますが、楽器が乾燥してきたなと感じた時にケアをお願いします。
あまり頻繁に塗ると、木材の状態を安定させにくくなります。塗ると状態が変化しますので。
多すぎるワックスは、ホローボディーのトップ材に反りを起こさせる要因のひとつにもなります。
逆に塗らなさ過ぎて乾燥が進むとクラックを起こす事があります。
私は自分の楽器の弦をあまり交換する方ではなく、数ヶ月から半年に一度ぐらいしか交換しませんので、
弦交換の際にフレットをまず磨いてから拭きして汚れをとった後、ワックスでケアしています。
ここまで書くと面倒だなと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、塗装していない指板材のケアと同じで、
それを楽器全体にして頂くだけの事です。木製PUカバー、木製ノブ、木製ブリッジにも塗って下さい。
オイルフィニッシュの良さは、使用していくうちに木材の経年変化を感じられる事です。
オイルによる木材の変色(過去に実験して感じたのは、黄変は使用するオイルの種類によっても違いました)、
使用していく間に生まれるくすみ、太陽光による変色など、ハードフィニッシュでは感じにくい変化を
オイルフィニッシュでは感じる事が出来ます。
木材の表面に皮膜が無いので傷つきやすいですが、逆に考えると傷を消しやすく、サンドペーパーで研磨したり、
蒸気で凹みを修正する事が出来ます。
ですが、あまり神経質になって頂くよりも使用中に出来る傷も味のひとつと考えて頂いた方が良いと思います。
感覚としては、代々受け継がれていく様な木製のテーブルや家具の様な感じでしょうか。
傷つき汚れてもメンテナンスを行い長年使用していく。
サテンフィニッシュ、セラックニスは、柔らかい布でから拭きして頂ければ結構です。
Adamovicの場合、サテンフィニッシュの楽器でも多くの場合指板は無塗装なので上記のケアをお願いします。
セラックニスは、手間がかかり過ぎる為に現在は使用を中止していますが、
これはアルコールニスなので絶対にアルコールに触れさせないで下さい。溶けてしまいます。
硬度があるニスなのでクラックは入り易いですが、マイクロメッシュシートと石けん水で消す事が出来ます。
ですが、皮膜を研磨していますのでやり過ぎるとニスが薄くなってしまいます。
こちらも味わいとして考えて頂いた方が良いと思います。
他にも疑問点がありましたら、over the fieldまでお気軽にお問い合わせ下さい。